私たちが日々インターネットを利用している中で、自然と目にしているのが「ディスプレイ広告」です。ニュースサイトの記事途中や、天気予報アプリの画面、YouTubeの横に並ぶバナー──これらはすべて、ディスプレイ広告という仕組みを通じて配信されています。
広告代理店としてこれまで数百社以上のWeb集客支援を行ってきた実務経験から断言できるのは、ディスプレイ広告は「潜在層への認知拡大」と「行動喚起」を同時に狙える極めて汎用性の高い広告手法であるということです。
特に、まだ自社の商品やサービスを知らないユーザー層にリーチできる点で、リスティング広告とは違った役割を果たします。
一方で、配信面が広範囲にわたる分、正しく設計しないと広告費を無駄に消化してしまうリスクも高いのがディスプレイ広告の特徴でもあります。広告運用のプロであっても、設計段階の精度によって成果に大きな差が生まれる分野です。
本記事では、広告初心者の方にも理解しやすいように、ディスプレイ広告の仕組み・特徴・種類・メリット・デメリット・活用のコツまでを体系的に解説していきます。すでに広告運用に携わっている方も、改めて自社の施策を見直すヒントとしてご活用いただければ幸いです。
ディスプレイ広告とは?

ディスプレイ広告とは、Webサイトやアプリ上にバナー・画像・動画・テキスト形式で表示されるインターネット広告の総称です。検索結果に連動して表示されるリスティング広告(検索連動型広告)とは異なり、ユーザーの検索行動に依存せず、広範な配信面を活用して広告を表示できるのが最大の特徴です。
広告が掲載される場所
ディスプレイ広告は、以下のような様々な配信面に掲載されます。
- ニュースサイトやブログなどのWebメディア
- アプリ内の広告枠(ゲームアプリ・天気アプリなど)
- YouTubeの再生画面やおすすめ欄
- SNSプラットフォームのフィード内(Facebook広告・Instagram広告等)
これらの掲載先は、Google広告なら「Googleディスプレイネットワーク(GDN)」、Yahoo!広告なら「Yahoo!広告ディスプレイ広告」など、巨大な広告ネットワークによって一括管理されています。
ターゲティングの幅広さ
ディスプレイ広告では、検索キーワードに依存しない代わりに、ユーザー属性・興味関心・閲覧履歴・地域・年齢・性別・デバイスなど、多様なターゲティング条件を設定できます。
これにより、まだ自社の商品・サービスを認知していない潜在顧客にもアプローチできることが、リスティング広告とは大きく異なるポイントです。
視覚的アプローチが可能
画像・動画・アニメーションなどを活用し、視覚的な訴求力の高いクリエイティブでアピールできるのもディスプレイ広告ならではの強みです。ブランドイメージの構築や感情的な訴求に優れており、認知フェーズで非常に高い効果を発揮します。
リスティング広告との違い

ディスプレイ広告と比較される代表的なWeb広告が、リスティング広告(検索連動型広告)です。どちらもインターネット広告の中心的な存在ですが、仕組み・ターゲティング・目的が大きく異なります。ここでは、広告代理店としての現場経験に基づき、わかりやすく違いを整理します。
① ユーザーの状態が違う
- リスティング広告
→ 検索行動を起こした顕在層向け
→ 既に「探している」「調べている」状態のユーザーに配信
→ 例:「福岡 マーケティング会社」と検索したユーザー - ディスプレイ広告
→ まだ検索していない潜在層にもアプローチ可能
→ 興味関心・属性・過去の行動履歴などをもとに配信
→ 例:マーケティングに興味がありそうな中小企業経営者
② 配信される場所が違う
- リスティング広告
→ 主にGoogle検索・Yahoo!検索の検索結果ページ - ディスプレイ広告
→ Webサイト、アプリ、YouTube、ニュースメディア、SNSなど非常に広範囲
③ 訴求内容の作り方が違う
- リスティング広告
→ ユーザーがキーワードを入力するため、テキスト中心のニーズ直結型広告が有効 - ディスプレイ広告
→ 画像・動画・アニメーションなど視覚的クリエイティブ重視
④ 主な活用目的が違う
活用目的 | リスティング広告 | ディスプレイ広告 |
---|---|---|
認知拡大 | △ | ◎ |
潜在層の掘り起こし | △ | ◎ |
顕在層の獲得 | ◎ | △ |
追客(リターゲティング) | ◎ | ◎ |
このように、両者は役割が明確に異なるため、広告施策ではしばしば併用されます。
「いますぐ客はリスティング、これから客はディスプレイ」というのが現場でもよく使う考え方です。
参考記事:リスティング広告とは?初心者でもわかる仕組み・種類・運用のポイントを徹底解説
ディスプレイ広告の種類

ディスプレイ広告は非常に幅広い形式が存在します。広告の目的や商材、ターゲット層によって適切なフォーマットを使い分けることが重要です。ここでは代表的な種類を紹介します。
① バナー広告
もっとも一般的なディスプレイ広告がバナー広告です。指定された画像サイズ(例:300×250px、728×90pxなど)に合わせて制作された画像やGIF、静止画がWebサイトの所定位置に表示されます。
- 特徴
- 目に留まりやすく、ブランド認知に効果的
- クリック率は比較的低い傾向
- 活用例
- 新商品やサービスの告知、セール情報の訴求
② レスポンシブ広告(自動最適化バナー)
Google広告を中心に普及しているのがレスポンシブディスプレイ広告です。広告主が複数の画像・ロゴ・見出し・説明文を登録しておくと、配信面ごとに最適な組み合わせ・サイズで自動生成してくれる仕組みです。
- 特徴
- 各掲載面に最適化され配信範囲が広がる
- クリエイティブの工数を削減できる
- 活用例
- 大規模配信、運用自動化を重視した広告キャンペーン
③ 動画広告
YouTubeをはじめとする動画広告もディスプレイ広告の一種に含まれます。音声・映像を活用することで、より高い訴求力とブランドイメージの浸透が期待できます。
- 特徴
- 記憶に残りやすく感情訴求に強い
- 制作コストは静止画より高め
- 活用例
- 新ブランド訴求、サービス説明、ユーザーボイス紹介
④ ネイティブ広告
ネイティブ広告は、広告枠がコンテンツの一部のように自然に表示される形式です。ユーザーの違和感を減らしつつ、情報提供型コンテンツとして認知拡大に活用されます。
- 特徴
- 広告色を薄め、自然な閲覧誘導が可能
- コンテンツ制作力が求められる
- 活用例
- 記事型広告、タイアップ広告、フィード内広告
⑤ 動的ディスプレイ広告(ダイナミック広告)
動的ディスプレイ広告は、ユーザーが過去に閲覧した商品や興味関心データに基づいて、広告内容を自動でパーソナライズ配信する手法です。ECサイトや旅行サイトで特に活用されています。
- 特徴
- 商品情報フィードと連携して自動生成
- 高精度なリターゲティングが可能
- 活用例
- カート離脱ユーザーへの再訴求、パーソナライズ商品提案
まとめると:
種類 | 主な特徴 | 向いている目的 |
---|---|---|
バナー広告 | 静止画で広く配信 | 認知拡大 |
レスポンシブ広告 | 自動最適化 | 運用効率化 |
動画広告 | 視覚・聴覚訴求 | ブランド訴求 |
ネイティブ広告 | 自然な露出 | 潜在層への教育 |
動的ディスプレイ広告 | パーソナライズ | 追客・リターゲティング |
ディスプレイ広告のメリット

ディスプレイ広告は、リスティング広告やSNS広告ではリーチしきれない領域をカバーできる強みを持っています。ここでは、広告代理店として現場で数多くの運用実績を積んできた立場から、実務的なメリットを整理します。
① 潜在層へのアプローチが可能
ディスプレイ広告最大の武器は認知拡大力です。
ユーザーがまだ検索行動を起こしていない段階でも、興味関心や属性データをもとに広告配信ができるため、
- まだ課題を自覚していないユーザー
- 競合比較前の早期段階のユーザー
といった潜在顧客に事前接触できます。これはリスティング広告では届きにくい層です。
② リターゲティング施策に強い
一度サイトに訪問したものの離脱したユーザーを追いかけるリターゲティング広告(リマーケティング広告)でも、ディスプレイ広告は非常に効果的です。
購買検討中のユーザーに繰り返しアプローチすることで、コンバージョン率(成約率)を高められます。
③ 視覚的訴求でブランドイメージを浸透
画像・動画・アニメーションを活用できるため、商品やブランドの世界観を直感的に伝えやすいのもディスプレイ広告の強みです。
特に商品認知やブランド啓蒙フェーズにおいて、テキスト中心の広告以上のインパクトを生み出します。
④ クリック単価(CPC)が比較的安価
リスティング広告は競合が激しく、キーワードによっては1クリック数千円になる場合もありますが、
ディスプレイ広告は比較的低単価(数十円〜数百円程度)で配信可能なケースが多いです。
少額予算でも一定のトラフィックを獲得しやすく、広告費効率の良さにつながります。
⑤ 配信ボリュームが圧倒的に広い
Googleディスプレイネットワーク(GDN)やYahoo!広告ディスプレイ広告を利用すれば、
何百万、何千万という膨大なユーザーにリーチできます。
全国規模・大規模リーチが必要な広告キャンペーンとも相性が良いです。
総括すると:
ディスプレイ広告は「認知 → 興味 → 検討」の前半フェーズで威力を発揮する武器です。
リスティング広告やSNS広告と適切に組み合わせることで、マーケティング全体の成果が大きく向上します。
ディスプレイ広告のデメリット
ディスプレイ広告は非常に魅力的な広告手法ですが、万能ではありません。導入前に把握しておくべき注意点・弱点もいくつか存在します。ここでは、広告運用の現場でよく遭遇する実務的なデメリットを整理します。
① コンバージョン率は低下しやすい
ディスプレイ広告は「潜在層へのアプローチ」を得意としますが、
裏を返せば購買意欲が高いユーザーとは限らない層にも多く配信されます。
そのため、リスティング広告や指名検索と比較すると、
- コンバージョン率(CVR)が低下しやすい
- 無駄クリックが一定数発生しやすい
という特徴があります。
成果に直結するまで時間がかかる場合も多いため、KPI設計は慎重に行う必要があります。
② クリエイティブ品質に成果が左右される
画像・動画を使える反面、クリエイティブ制作の質が成果に直結します。
- 視認性の高いバナー設計
- 魅力的なコピーライティング
- ブランドイメージに沿った色使い・構成
など、広告デザインに対するスキル・ノウハウが問われます。
適当なバナーでは全く反応が取れないケースも少なくありません。
③ 誤クリック・無駄配信リスクがある
配信面が広いため、以下のような無駄配信・誤クリックが生じる可能性も高まります。
- 子どもや高齢者の誤タップ
- 興味関心が薄いユーザーへの表示
- 広告が誤解を生む掲載位置への配信
これらを防ぐには、除外設定や配信面精査をこまめに行う運用スキルが求められます。
④ 効果測定がやや難しい
ディスプレイ広告は「認知貢献」の側面が強いため、
クリックやコンバージョンだけでは効果測定しきれないケースも出てきます。
- ビュースルーコンバージョン(間接貢献)
- ブランド想起率の変化
- 来店・電話などオフライン成果
といった、間接的指標も含めた全体評価が必要になります。
⑤ 消化ペースが速くなりやすい
配信面が広いため、設定次第では短期間で予算が一気に消化されるケースも珍しくありません。
最適なターゲティング・入札単価の管理が必須です。
まとめると:
ディスプレイ広告は「広く」「早く」「大量に」届けられる反面、
雑な設計・運用では簡単に広告費が溶けるリスクがあるという特徴を持ちます。
きちんと設計すれば非常に頼もしい武器ですが、
「適切な戦略 × 丁寧な運用 × 継続的な改善」が必要不可欠な広告施策です。
まとめ

ディスプレイ広告は、Web広告の中でも認知拡大から潜在層育成、追客施策まで幅広く活用できる非常に汎用性の高い手法です。特に、リスティング広告だけではカバーしきれない「まだ検索していない顧客」にリーチできる点が大きな魅力といえます。
一方で、配信面が広いがゆえに無駄な配信を抑える設計力や、訴求力の高いクリエイティブ制作が成果を大きく左右します。広告代理店として多数の案件を支援してきた経験からも、「ディスプレイ広告は準備段階が7割」と言っても過言ではありません。
これからディスプレイ広告を活用しようと考えている方は、ぜひ以下のポイントを意識してください。
- 目的を明確にする(認知か、追客か、CV狙いか)
- ターゲティング精度を高める
- クリエイティブ品質を重視する
- 配信後も効果測定と改善を継続する
また、ディスプレイ広告はリスティング広告関連知識を深めたい方は、以下の関連記事も併せてご参照ください。