「早い・安い・うまい」で知られるマクドナルドですが、単なるハンバーガーチェーンと捉えると、その本質を見誤ります。
全世界で100カ国以上、日本国内でも約3,000店舗以上を展開するマクドナルドは、もはや外食業ではなく、“生活の一部を設計するインフラ企業”といっても過言ではありません。

その成功の鍵は、マーケティングの基本である「STP分析」によって、顧客理解と体験設計を徹底的に行っていることにあります。

本記事では、マクドナルドの強さを、STP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)の3視点から解説し、「なぜ選ばれ続けるのか」をマーケティング的に紐解きます。

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STP分析とは?【基本の整理】

STP分析とは?

STP分析とは、次の3ステップからなるマーケティング戦略設計の基本フレームワークです。

要素内容
Segmentation(市場細分化)顧客を属性・行動・志向などで分類する
Targeting(標的市場の選定)狙う顧客層を明確に決める
Positioning(差別化とブランド設計)顧客の頭の中での自社の立ち位置をつくる

この分析を基盤にマクドナルドは、「誰に」「何を」「どうやって届けるか」を設計し続けているのです。

セグメンテーション:マクドナルドが見ている多様な市場

セグメンテーション

マクドナルドは、商品ではなく“利用体験”を基軸に、市場を細かく分けています。

1. デモグラフィック(属性)軸

属性セグメント例
年齢子ども、学生、20〜40代、シニア
家族構成単身、カップル、ファミリー、三世代
職業学生、会社員、主婦、定年退職者

2. サイコグラフィック(価値観)軸

志向セグメント例
スピード重視忙しいビジネスパーソン、通勤前の朝食ニーズ
コスパ重視学生、子育て世帯
ファミリー・子どもとの時間重視親子連れ、休日利用層
ブランド・エンタメ志向若年層(キャラクター、季節限定商品に敏感)

3. 行動(利用状況)軸

  • 朝マック需要(7〜10時の朝食対応)
  • ランチタイム(11〜14時)でのピーク帯回転重視
  • ドライブスルー/モバイルオーダーなど「非接触」のニーズ
  • テイクアウト/UberEatsなど“外食の多様化”に対応

このように、マクドナルドは単なる「ハンバーガー好き」を狙っているのではなく、“状況と気分”によって人々が何を求めているかに合わせて市場を見ています。

ターゲティング:マクドナルドが狙う主な顧客層

ターゲティング

セグメントを分けた上で、マクドナルドは非常に広いターゲットを“使い分け”ています。

1. メインターゲット:10〜40代のファミリー層・若年層

  • 子ども連れファミリーには「ハッピーセット」で食と遊びの価値を提供
  • 20〜30代の働く層には「朝マック」や「モバイルオーダー」で利便性を強調
  • 若年女性向けには「ご褒美系バーガー」や季節限定スイーツで感性訴求

2. サブターゲット:学生・ビジネスマン・シニア層

  • 学生には「ポテト・バーガー・ドリンクのセット」で満足感とコスパ
  • シニア層には“日常の軽食”としての空間提供(コーヒー・100円メニュー)
  • ビジネスマンには「ちょっとした空き時間のWi-Fi・コーヒー利用」

3. ライフスタイル別の利用パターン

  • 一人で:モバイルオーダー、朝マック、カフェ利用
  • 二人で:夜マック、シェア系メニュー
  • 家族で:週末ハッピーセット、店舗内遊具付き店舗での長時間滞在

マクドナルドは**「1商品で全員に売る」のではなく、「シーンごとに商品と価値を使い分けて売る」戦略**をとっています。

ポジショニング:マクドナルドが築いた「みんなの味方」ブランド

ポジショニング

マクドナルドの強さは、単なる「ファストフード」ではなく、**「いつでも・誰でも・どんなときでも安心して頼れる存在」**というポジショニングにあります。

1. 価格軸ではなく、“信頼軸”での差別化

  • 「安さ」だけでなく「価格に対する満足度」を訴求
  • キャンペーン価格、セットメニュー、クーポンなどで“体感的コスパ”を重視

2. 競合とのポジショニング比較

ブランドポジショニング特徴
マクドナルド信頼・定番・利便性安心感・標準化・いつでも行ける
モスバーガー手作り感・健康志向国産・やさしい味
バーガーキング食べ応え・個性肉・直火焼き・本格志向
ロッテリアローカル密着・メニューの多様性ご当地・珍メニューあり

マクドナルドは、「誰にとっても標準の選択肢」であり続けることで、幅広い支持を得るポジションを確立しています。

STP分析から読み解くマクドナルドの成功要因

マクドナルドのSTP戦略の優れている点は、「広く浅く」ではなく、「広く深く刺す」戦略にあります。

  • 多様なセグメントに対して、体験価値を最適化
  • ターゲットごとに商品・時間帯・価格・空間を設計
  • 「価格」ではなく「日常への浸透」でポジションを築く

さらに近年では、環境問題(プラスチック削減)、地域とのコラボ(地方限定メニュー)、採用ブランディング(クルー教育)など、「社会と共にあるブランド」への進化も見せています。

まとめ:マクドナルドのSTP戦略に学ぶ、“売れる仕組み”の作り方

マクドナルドは、マーケティングの教科書に載っているような典型的フレームワークを、“現場で再現可能な仕組み”として実装しています。

  • Segmentation:属性だけでなく“行動・感情・時間軸”で市場を分解
  • Targeting:ライフスタイルに応じて価値と訴求を切り替え
  • Positioning:商品ではなく「信頼できる時間と空間」の象徴

この考え方は、中小企業や飲食業にもそのまま応用できます。
「誰の、どんな課題を、どういう体験で解決するか」を丁寧に設計することが、価格競争から脱し、“意味で選ばれる”ブランドをつくる第一歩なのです。

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