看護業界におけるSWOT分析の基本と実践方法を具体的に解説!

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看護の現場は日々進化しており、看護師や看護管理者は常に新しい課題に直面しています。そんな中で、自分たちの強みや弱みを理解し、外部の機会や脅威にどう対応するかを明確にすることが重要です。そこで役立つのが、SWOT分析です。

SWOT分析とは、自分たちの内部環境と外部環境を「強み(Strengths)」「弱み(Weaknesses)」「機会(Opportunities)」「脅威(Threats)」の4つの視点から分析する手法です。この分析を行うことで、看護部門の改善点や、個々の看護師のキャリアアップに向けた具体的な戦略を立てることができます。

本記事では、看護の分野でSWOT分析をどのように活用するかについて解説します。具体的な事例を交えながら、実践的なアドバイスを提供しますので、ぜひ最後までご覧ください。

SWOT分析とは?

SWOT分析は、組織や個人が直面する環境を把握し、戦略を立てるためのフレームワークです。これは、「Strengths(強み)」「Weaknesses(弱み)」「Opportunities(機会)」「Threats(脅威)」の4つの要素から構成されます。看護の分野では、病院や看護部門、個々の看護師の状況を分析するために広く利用されています。

SWOT分析の基本構造

  1. 強み(Strengths):
    • 組織や個人の内部に存在する有利な要素
    • 例:看護部門の高い専門性やチームワーク、新しい看護技術の導入
  2. 弱み(Weaknesses):
    • 組織や個人の内部に存在する不利な要素
    • 例:スタッフの不足や設備の老朽化、教育機会の不足
  3. 機会(Opportunities):
    • 外部環境からもたらされる有利な要素
    • 例:政府の医療改革や地域医療の需要増加、技術の進展
  4. 脅威(Threats):
    • 外部環境からもたらされる不利な要素
    • 例:競合病院の増加や診療報酬の引き下げ、パンデミックの影響

看護分野でのSWOT分析のメリット

SWOT分析を行うことで、以下のようなメリットがあります。

  • 現状の客観的な把握: 自分たちの強みや弱みを明確にすることで、現状を正確に理解することができます。
  • 戦略的な計画立案: 機会を最大限に活用し、脅威に対抗するための具体的な戦略を立てることができます。
  • チームの協力促進: 分析を通じて、チーム全体で共通の課題を共有し、協力して解決策を見つけることができます。

SWOT分析の具体的な適用例

具体例を交えることで、SWOT分析がどのように機能するかを理解しましょう。

  • 看護部門のSWOT分析: ある病院の看護部門では、7対1の入院基本料を取得している点を「強み」として挙げ、教育ラダーにそった院内研修の充実を「機会」として活用しています​​。
  • 看護師個人のSWOT分析: 転職を考えている看護師が、自身のスキルアップへの意欲を「強み」とし、夜勤ができないという点を「弱み」として捉えています​​。
  • 病院全体の経営戦略: 高齢化社会に対応するために、高齢患者の増加を「機会」として捉え、救急患者受け入れ体制の拡充を図っています​​。

クロスSWOT分析

クロスSWOT分析とは、SWOT分析で特定した4つの要素を組み合わせ、より具体的な戦略を導き出す手法です。以下の組み合わせを行います:

  1. 強み × 機会:
    • 強みを活かして機会を最大化する戦略。例:強い技術力を活かして新市場に進出する。
  2. 弱み × 機会:
    • 弱みを克服して機会を活かす戦略。例:資金不足を外部資金調達で補い、新製品開発に投資する。
  3. 強み × 脅威:
    • 強みを活かして脅威に対抗する戦略。例:強いブランド力で新規競合の参入を防ぐ。
  4. 弱み × 脅威:
    • 弱みを克服し、脅威を回避する戦略。例:人材不足を補うために効率的な研修プログラムを導入する。

クロスSWOT分析を用いることで、SWOT分析の結果をさらに具体的なアクションプランに落とし込み、より効果的な経営戦略を立案することが可能です。

次のセクションでは、看護管理者向けのSWOT分析の手法とその具体例について詳しく見ていきます。SWOT分析を効果的に活用し、看護の現場での改善点を見つけ出す方法を学びましょう。

看護管理者向けのSWOT分析

看護管理者として、効果的なSWOT分析を行うことで、部門全体の強みや弱みを把握し、戦略的な改善策を立案することができます。ここでは、看護管理者がSWOT分析を実践するための手順と具体例を紹介します。

SWOT分析の手順

  1. 内部環境の分析:
    • 部署内の強み(Strengths)と弱み(Weaknesses)をリストアップします。これは、スタッフのスキル、設備、教育体制など、内部の要素に焦点を当てます。
    • 例:看護部門の高い専門性やチームワーク、スタッフの不足や設備の老朽化​​。
  2. 外部環境の分析:
    • 外部の機会(Opportunities)と脅威(Threats)を特定します。これは、政策の変更、地域社会のニーズ、技術の進展など、外部の要因に焦点を当てます。
    • 例:政府の医療改革や地域医療の需要増加、競合病院の増加や診療報酬の引き下げ​​。
  3. クロスSWOT分析の実施:
    • 内部の強みを外部の機会と組み合わせて戦略を立てます。また、弱みと脅威を組み合わせてリスク管理策を考えます。
    • 例:高齢化の進展により患者増を見込み、脳外科を中心に急性期病棟を強化する戦略​​。
  4. 戦略の優先順位付け:
    • 分析結果をもとに、実行可能な戦略を優先順位付けし、具体的な行動計画を立てます。

具体例:看護部門のSWOT分析

看護部門のSWOT分析の事例を表した図

ここでは、実際の病院の看護部門におけるSWOT分析の事例を紹介します。

S(強み):

  • 7対1の入院基本料を取得している。
  • 離職率が低い。
  • 自部署経験年数が5年以上の看護師が多い。
  • 委員会やリンクナース会の活動が活発。
  • 他病棟と比較して超過勤務時間が少ない​​。

W(弱み):

  • 高齢患者が増え、退院支援がうまくいっていない。
  • 診療報酬に関しての勉強が不足。
  • 新しい取り組みや提案が少ない。
  • 部署異動を希望しないスタッフが多い。
  • 新人教育が担当者任せになっている​​。

O(機会):

  • 看護部の教育ラダーに沿った院内研修が充実している。
  • 付属の訪問看護ステーションがある。
  • 救急車の受け入れ件数が増加している​​。

T(脅威):

  • 認知症の患者が増加している。
  • 近隣に三次救急病院が複数ある。
  • 診療報酬のマイナス改定が続いている​​。

クロスSWOT分析と戦略立案

クロスSWOT分析と戦略立案を表した図

SWOT分析の結果をもとに、クロスSWOT分析を行い、具体的な戦略を立てます。

積極的戦略(強み×機会):

  • 経験豊富な看護師が多いため、教育を充実させて看護ケアの質を向上させる。
  • 救急入院の受け入れを増やすため、看護できる診療科を増やす​​。

差別化戦略(強み×脅威):

  • 認知症看護を充実させるため、リンクナース会の活動を強化​​。

弱み克服(弱み×機会):

  • 院内研修や訪問看護ステーションとの連携で、退院支援を充実させる​​。

最悪事態回避(弱み×脅威):

  • 診療報酬の学習会を開き、スタッフが医療や看護の動向を理解する​​。

このように、看護管理者はSWOT分析を活用して、効果的な戦略を立案し、部門全体の改善を図ることができます。次は、看護師個人のキャリア形成におけるSWOT分析の活用方法について見ていきましょう。

看護師個人のSWOT分析

看護師としてのキャリア形成には、自分自身の強みや弱みを理解し、外部の機会や脅威にどう対処するかが重要です。SWOT分析を活用することで、これらの要素を明確にし、効果的なキャリアプランを立てることができます。ここでは、看護師個人のSWOT分析の具体的な手順と実例を紹介します。

SWOT分析の手順

  1. 内部環境の分析:
    • 自分自身の強み(Strengths)と弱み(Weaknesses)をリストアップします。これは、スキル、経験、個人的な特性など、内部の要素に焦点を当てます。
    • 例:コミュニケーション能力の高さ、臨床経験の少なさ​​。
  2. 外部環境の分析:
    • 自分に影響を与える外部の機会(Opportunities)と脅威(Threats)を特定します。これは、就職市場の状況、医療業界の動向、家族の状況など、外部の要因に焦点を当てます。
    • 例:新しい看護技術の習得機会、夜勤ができないことによるキャリア制約​​。
  3. クロスSWOT分析の実施:
    • 内部の強みを外部の機会と組み合わせてキャリア戦略を立てます。また、弱みと脅威を組み合わせてリスク管理策を考えます。
  4. 戦略の優先順位付け:
    • 分析結果をもとに、実行可能なキャリア戦略を優先順位付けし、具体的な行動計画を立てます。

具体例:看護師個人のSWOT分析

看護師個人のSWOT分析を表した図

S(強み):

  • 20代後半でスキルアップに積極的
  • 長期的な就業が可能​

W(弱み):

  • 臨床経験が4年程度
  • 夜勤ができない
  • 子どもの世話のために仕事を休むことがある​

O(機会):

  • パートタイマーや派遣勤務の選択肢がある
  • 新しい知識や技術の獲得機会​

T(脅威):

  • 夜勤ができないことによる給与の低下
  • 急な休みに対応が難しい​

クロスSWOT分析と戦略立案

クロスSWOT分析と戦略立案を表した図

積極的戦略(強み×機会):

  • スキルアップに積極的な性格を活かし、パートタイムで働きながら新しい看護技術を学ぶ。

差別化戦略(強み×脅威):

  • 長期的な就業が可能である点を活かし、夜勤がない職場でのキャリアを積む。

弱み克服(弱み×機会):

  • 臨床経験が少ないことを補うため、短期間で効果的な研修プログラムに参加する。

最悪事態回避(弱み×脅威):

  • 夜勤ができない場合の給与低下に対処するため、日勤のみの高給与の職場を探す。

このように、看護師個人がSWOT分析を活用することで、効果的なキャリア戦略を立て、自身の成長と満足度を高めることができます。次は、病院全体の経営戦略としてのSWOT分析の活用方法について見ていきます。

病院全体の経営戦略としてのSWOT分析

病院全体の経営戦略を効果的に立案するためには、SWOT分析が非常に有用です。内部の強みと弱み、外部の機会と脅威を把握し、戦略的な計画を立てることで、病院の競争力を高め、患者により良いサービスを提供することができます。ここでは、病院全体でSWOT分析を活用する手順と実例を紹介します。

SWOT分析の手順

  1. 内部環境の分析:
    • 病院の強み(Strengths)と弱み(Weaknesses)をリストアップします。これは、医療スタッフのスキル、設備、治療方法など、内部の要素に焦点を当てます。
    • 例:優秀な医師の確保、高度な医療設備の導入​​。
  2. 外部環境の分析:
    • 病院に影響を与える外部の機会(Opportunities)と脅威(Threats)を特定します。これは、地域の医療需要、政策の変化、競合病院の動向など、外部の要因に焦点を当てます。
    • 例:高齢化社会の進展による患者数の増加、診療報酬の引き下げ​​​​。
  3. クロスSWOT分析の実施:
    • 内部の強みを外部の機会と組み合わせて戦略を立てます。また、弱みと脅威を組み合わせてリスク管理策を考えます。
  4. 戦略の優先順位付け:
    • 分析結果をもとに、実行可能な戦略を優先順位付けし、具体的な行動計画を立てます。

具体例:病院全体のSWOT分析

病院全体のSWOT分析を表した図

S(強み):

  • 脳外科の症例数が多く、優秀な医師を確保している。
  • 高度な医療設備が整っている​​。

W(弱み):

  • 在院日数が長期化している。
  • 看護の質の低下が懸念されている​​。

O(機会):

  • 高齢化の進展により患者増を見込める。
  • 地域医療との連携強化の機会​​。

T(脅威):

  • 診療報酬改定による収益の減少。
  • 近隣の競合病院のリニューアル予定​​​​。

クロスSWOT分析と戦略立案

クロスSWOT分析と戦略立案を表した図

積極的戦略(強み×機会):

  • 高齢化の進展により患者数の増加を見込み、脳外科を中心に急性期病棟を強化する戦略。
  • 地域の医院との関係を強化し、救急患者受け入れ態勢を拡充する​​。

差別化戦略(強み×脅威):

  • 脳外科の実績を活かし、新規入院患者や救急受け入れ患者を増やす。
  • 高度な医療設備を活用し、他病院との差別化を図る​​。

弱み克服(弱み×機会):

  • 在院日数の短縮と適切な退院支援の実施。
  • 看護の質を向上させるための研修プログラムの強化​​。

最悪事態回避(弱み×脅威):

  • 診療報酬の学習会を開催し、医療や看護の動向を理解する。
  • 看護の質を向上させ、競合病院のリニューアルに対抗する​​。

このように、病院全体でSWOT分析を活用することで、効果的な経営戦略を立案し、患者により良い医療サービスを提供することができます。次は、SWOT分析を実践するにあたってのポイントについて詳しく見ていきましょう。

SWOT分析を実践するにあたってのポイント

SWOT分析を効果的に活用するためには、いくつかのポイントを取り入れることが重要です。これにより、看護部門や個々の看護師、病院全体が直面する課題を解決し、持続可能な成長を実現するための具体的な戦略を立てることができます。

定期的なSWOT分析の実施

病院や看護部門、個人の状況は時間とともに変化します。そのため、SWOT分析を定期的に実施し、最新の情報を反映させることが重要です。

  • 年次レビュー: 毎年、部門ごとにSWOT分析を行い、過去の戦略の成果を評価し、新たな計画を立てます。
  • 四半期ごとのチェックイン: 四半期ごとに進捗を確認し、必要に応じて戦略を調整します。これにより、短期的な変化にも柔軟に対応できます。

チームでの協力

SWOT分析は多様な視点を取り入れることで、より総合的な分析が可能になります。看護師、医師、事務スタッフなど、異なる役割のメンバーを含めたチームで行うことが効果的です。

  • ブレインストーミングセッション: チームでブレインストーミングセッションを開催し、各メンバーの意見を出し合います。これにより、見落とされがちな課題や新たなアイデアを発見することができます。
  • クロスファンクショナルチーム: 異なる部門や役割のメンバーを含めたクロスファンクショナルチームを組織し、SWOT分析を実施します。これにより、部門間の連携が強化されます。

行動計画の具体化

SWOT分析の結果を基に、具体的な行動計画を立てることが重要です。目標を設定し、達成に向けた具体的なステップを明確にします。

  • SMARTゴールの設定: 目標は具体的(Specific)、測定可能(Measurable)、達成可能(Achievable)、現実的(Realistic)、時間制約のある(Time-bound)SMARTゴールとして設定します。
  • アクションプランの作成: 各ゴールに対する具体的なアクションプランを作成します。誰が、何を、いつまでに行うかを明確にします。
  • 進捗管理: 定期的に進捗をチェックし、目標達成に向けての進行状況を確認します。必要に応じて計画を修正します。

継続的な学習と改善

SWOT分析を通じて発見された課題や機会をもとに、継続的な学習と改善を行います。

  • フィードバックループの構築: 定期的なフィードバックセッションを開催し、チームメンバーからの意見を取り入れます。これにより、改善点を見つけやすくなります。
  • 研修プログラムの実施: 分析結果に基づいて必要なスキルや知識を補うための研修プログラムを実施します。これにより、チーム全体の能力を向上させます。

このように、SWOT分析を効果的に活用するためには、定期的な見直しとチームでの協力、具体的な行動計画の立案、継続的な学習と改善が不可欠です。これにより、看護部門や病院全体が持続的に成長し、患者に対してより良いサービスを提供することが可能になります。

まとめ

この記事では、看護分野でのSWOT分析の基本と応用方法について詳しく解説しました。SWOT分析は、内部の強み(Strengths)と弱み(Weaknesses)、外部の機会(Opportunities)と脅威(Threats)を評価することで、効果的な戦略を立案し、看護の質を向上させるための強力なツールです。

SWOT分析を効果的に活用することで、看護部門や病院全体が持続的に成長し、患者に対してより良い医療サービスを提供することが可能です。これを機に、SWOT分析を積極的に取り入れ、戦略的な改善を図っていきましょう。

※SWOT分析について詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください。

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