飲食業界は競争が激しく、消費者ニーズの変化も激しいため、感覚だけで経営しているとすぐに取り残されてしまいます。
こうした環境の中で重要になるのが「3C分析」というフレームワークです。
この記事では、居酒屋チェーン「鳥貴族」の戦略を題材に、「飲食店における3C分析の実践的な活用方法」を解説します。実在企業の成功戦略から、あなたの飲食ビジネスに活かせるヒントを探りましょう。
3C分析とは?飲食店に必要な理由を実務目線で解説

3C分析とは、マーケティング戦略を立てるために「Customer(顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3つの視点から自社の状況を整理するフレームワークです。
■ 3Cの構成要素
要素 | 意味 | 飲食店での具体例 |
---|---|---|
Customer(顧客) | 誰に売るか/どんなニーズがあるか | 20代の学生層、1人飲み需要、健康志向、SNS映えを求める層など |
Competitor(競合) | 顧客の選択肢に入る他社 | 同業の居酒屋チェーン、個人経営店、ファミレス、コンビニの惣菜など |
Company(自社) | 自分たちの強み・弱み・特徴 | 立地、価格設計、メニュー開発力、接客力、ブランド力など |
■ なぜ飲食店に3C分析が必要なのか?
飲食業界は「立地がすべて」と言われるほど、感覚や経験に依存しがちな業種です。しかし、現代の消費者は価格・価値・体験すべてを天秤にかけて店舗を選びます。つまり、「なんとなく」や「みんなやってるから」では戦えない時代になっているのです。
3C分析を行うことで、次のような判断が論理的にできるようになります。
- 自店のターゲットはどの層か?
- その層は何を求めているのか?
- 競合はどこで、何が違うのか?
- 自店の価値はどこで生まれているのか?
- どのように選ばれる存在になれるのか?
このように3C分析は、飲食店にとって「経営の勘を言語化する」ための武器です。そして言語化できた戦略は、スタッフにも伝わり、組織としてブレない軸になります。
>>3C分析の詳細を知りたい方はこちらの記事をご覧ください。(記事内では3C分析のテンプレートも配布しています。)
鳥貴族を3C分析する理由
鳥貴族は「全品均一価格」というユニークなビジネスモデルで成長してきた全国チェーンです。
価格・オペレーション・出店戦略・ブランドづくりのすべてが戦略的に設計されており、マーケティング事例として非常に優れています。
特に、顧客セグメントの明確化と、それに対応するサービス提供の整合性は、飲食店が戦略を構築するうえでの理想的なモデルといえます。
Customer(顧客)の分析|鳥貴族は“誰のための店”か?

飲食店におけるCustomer分析とは、「誰が来店しているのか」「どんなニーズを抱えているのか」「どんな行動パターンがあるのか」を具体的に把握する作業です。鳥貴族の成功は、まさにこの「顧客理解の深さ」にあります。
■ メインターゲット:20代~30代の“価格感度が高い層”
鳥貴族の主要な顧客層は以下の通りです。
セグメント | 特徴とニーズ |
---|---|
学生グループ | 安くたくさん飲みたい。割り勘しやすさ重視。SNSでシェアしたい。 |
新社会人・若手社員 | 仕事帰りの飲み需要。気軽さと価格バランスを重視。 |
ひとり飲み層 | 安心して一人で飲める空間。注文のわかりやすさと居心地の良さ。 |
こうした層に共通するのは、「コストパフォーマンス重視」「気軽に使いたい」「選択が簡単であること」の3点です。
■ 鳥貴族の提供価値は“心理的コストの低さ”
特に注目すべきなのは、価格面だけでなく「心理的負担を下げる設計」がなされていることです。
● 全品均一価格で「選ぶストレス」を排除
メニューを見て「高い・安い」を気にせずに選べるという体験は、価格に敏感な若年層にとって大きな価値です。
● 割り勘が圧倒的にしやすい
全品同価格で会計がシンプル。グループ利用で「誰が何頼んだか」が重要でなくなる設計は、学生・若手社会人に刺さります。
● 内装・接客も“ちょうどいい”
高級でもなく、安っぽくもない。適度なカジュアルさと清潔感があり、「気を遣わずに済む店」として認知されています。
■ 顧客が“鳥貴族を選ぶ理由”をデータ化できる
飲食店経営者が最も見落としやすいのが「なぜウチが選ばれているのか」を言語化することです。鳥貴族はこの“選ばれる理由”が明確で、以下のように整理できます。
- わかりやすさ(価格・メニュー・注文システム)
- 安心感(チェーンならではの品質・清潔さ)
- 気軽さ(1人でもグループでも使いやすい)
これらはすべて、Customer視点で徹底的に設計された戦略の成果です。
Competitor(競合)の分析|鳥貴族は何と戦い、どう違いを作っているか?

3C分析におけるCompetitor(競合)分析とは、「顧客が自店の代わりに選び得る存在」との違いを明確にし、自社が“選ばれる理由”を構築するための作業です。
鳥貴族が成功している理由のひとつに、この競合との差別化の徹底があります。
■ 鳥貴族にとっての主な競合は誰か?
【1】価格帯の近い居酒屋チェーン
- 例:和民、白木屋、はなの舞 など
- 特徴:飲み放題、豊富なメニュー、多人数向けの宴会プラン
【2】個人経営の居酒屋・大衆酒場
- 特徴:地域密着型、低価格、店主の個性が色濃い
【3】ファミレス・カジュアル外食
- 例:サイゼリヤ、ガスト、焼肉ライクなど
- 特徴:食事メインだが“軽く飲む”ニーズを取り込んでいる
■ 競合との差別化ポイント|鳥貴族の独自ポジション
比較軸 | 鳥貴族の戦略 | 競合店の傾向 |
---|---|---|
価格設計 | 全品均一価格で会計のわかりやすさを提供 | 商品ごとに価格が異なり、割り勘しづらい |
飲み放題 | あえて提供しない(単品に集中) | 飲み放題をフックに集客する店が多い |
メニュー数 | 厳選されたメニューでオペレーション効率化 | 豊富なメニューが売り(調理負荷が高い) |
店内の雰囲気 | 明るく清潔でカジュアル | 店舗ごとに差があり、品質にバラつき |
ブランドの統一感 | 全国どの店舗でも同じ体験が可能 | 地域・店舗によって体験が異なる |
■ 差別化のポイントは「選ばせない設計」
鳥貴族は、「あえて選ばせない」「悩ませない」ことを設計思想にしている点が非常にユニークです。
- 「価格が一律」→ 注文時の計算不要
- 「飲み放題なし」→ プラン選びの手間なし
- 「メニューが絞られている」→ 迷いが少なく、注文回転が速い
こうした“選ばせない”設計は、顧客にとっては「ラク」な体験であり、結果としてロイヤルティを高める要因になっています。
■ 差別化とは「他と違うこと」ではなく、「他と違う理由を持つこと」
競合にないユニークな施策を行えば差別化になるわけではありません。
鳥貴族の差別化が機能しているのは、「顧客がそれを求めており」「自社が提供できて」「競合ができていない」という3Cが整合しているからです。
Company(自社)の分析|鳥貴族の“売れる仕組み”はこう作られている

3C分析におけるCompany(自社)の分析は、「自社の強み・弱みは何か?」「競合と差別化できるリソースやノウハウはあるか?」を明確にする工程です。
鳥貴族は“シンプルな戦略”を“仕組み”として実行することに長けており、競争の激しい飲食業界で独自ポジションを築いています。
■ 自社の強み①|全品均一価格 × 高収益構造
「全品同価格」という設計は、単にお得感を演出するためではなく、利益構造に直結する戦略です。
- 原価率を商品別に最適配分し、メニュー全体で収益バランスを取る
- 注文のスピード化により回転率が向上
- 「選びやすさ」が顧客満足度を高め、リピート率が上がる
つまり、均一価格は“見せかけの値頃感”ではなく、「売上×利益×満足度」を同時に設計するための核なのです。
■ 自社の強み②|コスト最適化された出店戦略
鳥貴族は、居抜き物件を活用したドミナント戦略をとっています。これは単なるコスト削減ではありません。
- 店舗ごとに初期投資が少なく済む
- 既存の設備や立地を活かし、スピード出店が可能
- ドミナント展開により物流・採用・認知の効率が高い
これは中小飲食店が最も悩む「出店の失敗リスク」に対する強いモデルとなっています。
■ 自社の強み③|徹底されたオペレーション設計
鳥貴族のオペレーションは、**人手不足時代にも対応した“仕組み化の優等生”**です。
- メニューを厳選 → 調理工程を単純化 → 教育コストを削減
- 厨房レイアウト・動線の最適化 → 生産性を最大化
- 同一業態で統一運営 → 店長やスタッフの異動もスムーズ
その結果、低コストで品質を保ちやすいという、他の居酒屋チェーンが最も苦戦しているポイントを克服しています。
■ 自社の強み④|リピートを促すアプリ・CRM施策
「トリキ応援団」アプリなどを活用し、顧客との関係性強化にも注力しています。
- 来店スタンプ・クーポン配布などでリピートを促進
- 会員限定イベントなどでファン化を促す
- データ収集によるマーケティング最適化にも活用可能
ここでも、「単発の集客」ではなく**“顧客資産を蓄積するモデル”**が構築されています。
■ 鳥貴族の戦略は“選ばれる理由”を仕組みに変えた結果
ここまでの分析から見えてくるのは、鳥貴族の戦略が「思いつき」ではなく「構造化された設計」によって支えられているという点です。
- 顧客が喜ぶ理由
- 競合が真似できない理由
- 自社だからできる理由
この三位一体が成立しているからこそ、鳥貴族は長期的に成長を続けているのです。
まとめ:3C分析で戦略の本質が見える

鳥貴族のように「顧客・競合・自社」を明確に定義し、それに基づいて戦略を設計している企業は強いです。
飲食店経営者が3C分析を活用することで、自店舗の「選ばれる理由」を構造化できるようになります。
- 顧客にとっての“使いやすさ・分かりやすさ”
- 競合とはっきり違うポジション
- 自社の強みを最大限活かす戦略
この3点を明文化できれば、マーケティングは実行可能な戦略へと変わります。
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