星野リゾートと聞いて「高級」「洗練」「非日常」といったイメージを抱く人は少なくないでしょう。
しかし、それだけではこの企業の強さを説明しきれません。

実は、星野リゾートの真価は「顧客理解」と「ブランド戦略」にあります。
“旅の目的は人によって違う”という前提のもと、それぞれの旅に合ったブランド(星のや/界/リゾナーレ/OMO)を展開し、**明確にターゲットを分けたマーケティング戦略(STP分析)**を実践しています。

本記事では、星野リゾートの成長を支えるSTP戦略を解説し、なぜ価格競争に巻き込まれずに“価値で選ばれ続けているのか”を読み解いていきます。

無料配布中|STP分析が誰でもできる「実務テンプレート」

このテンプレートは戦略の方向性まで自然に導けるよう設計されています。会議・提案書・経営判断にもそのまま使えるプロ仕様です。

STP分析とは?【基礎と本質の解説】

STP分析とは?

STP分析とは、以下の3つの視点からマーケティング戦略を設計する手法です。

要素内容
Segmentation(市場細分化)市場を顧客の特徴やニーズで分ける
Targeting(標的市場の選定)自社が狙うターゲットを明確にする
Positioning(差別化・立ち位置の設計)顧客の頭の中で“自社の意味”をつくる

この考え方を徹底し、**「すべての人に同じサービスを提供しない」**という発想でブランド設計しているのが、星野リゾートの強みです。

セグメンテーション:星野リゾートの市場細分化戦略

セグメンテーション

星野リゾートは、「誰でも泊まれるホテル」を作るのではなく、「それぞれの旅の目的にぴったりの宿泊体験」を設計しています。

1. 属性軸(年齢・所得・ライフステージ)

セグメント例
年齢20代カップル、30〜40代ファミリー、60代夫婦など
所得高所得者(富裕層)、中〜中上所得層
旅行頻度年1回の贅沢旅、日常的な週末旅行など

2. 行動軸(旅行目的・シーン)

目的主な行動パターン
ご褒美旅行自分への癒し・リトリート
記念日パートナーとの特別な時間
子どもと体験重視・安全性・教育性
出張・都市観光短時間滞在×街ナカ活動型

3. 志向軸(価値観・期待する体験)

志向特徴
非日常体験志向日常を忘れる静寂・美意識の世界観
コスパ志向値段よりも「納得できる体験価値」重視
地域文化志向地元の食・文化・人に触れたい
子どもと成長志向五感で学べるような自然体験を求める

ターゲティング:ブランドごとに異なる顧客設定

ターゲティング

星野リゾートは、上記のような細分化をベースに、明確にブランドごとにターゲット層を設定しています。

1. 星のや|ラグジュアリー×非日常×静寂

  • ターゲット:高所得層・大人のカップル・経営層・著名人など
  • 旅の目的:日常からの隔離、完全なる没入体験
  • 特徴:客室はテレビなし/静かな空間/美食/建築美

例:星のや京都、星のや東京、星のや沖縄

2. 界(KAI)|温泉文化×現代的安心感

  • ターゲット:30〜50代の夫婦・女性グループ・母娘旅
  • 旅の目的:温泉+ご当地文化の体験
  • 特徴:地域の伝統工芸・食・温泉と現代性の融合

例:界 津軽、界 加賀、界 阿蘇

3. リゾナーレ|ファミリー×アクティブ×自然

  • ターゲット:子連れファミリー層・三世代旅行
  • 旅の目的:親も子も“本気で楽しめる”休日
  • 特徴:アスレチック・プール・体験学習型の施設多数

例:リゾナーレ八ヶ岳、那須、トマム(北海道)

4. OMO|都市観光×コスパ×街ナカ体験

  • ターゲット:20〜40代のミレニアル層・出張者・女子旅
  • 旅の目的:街歩き、食べ歩き、地元密着型の観光
  • 特徴:ガイド付き街歩き、カジュアル内装、駅近アクセス

例:OMO7 大阪、OMO5 金沢片町、OMO3 札幌すすきの

ポジショニング:差別化を生む“ブランド設計”の妙

ポジショニング

1. 競合との差別化ポイント

ブランド差別化要素
星野リゾートターゲット別ブランド戦略 × 地域体験の設計
一般ホテルチェーン同一ブランドで全国展開、均質サービス重視
民泊・Airbnbコスパ × 個人宅型 × 自由度は高いが不確実性あり

星野リゾートは、「ブランド名ごとにポジションを変える」ことで、すべての人を満たすのではなく、ひとりの人にとって“最適解”になる宿泊体験を提供しています。

2. 一貫したブランド体験

  • 各ブランドに世界観・接客・体験設計のルールがあり、どの施設に泊まっても「らしさ」が守られている
  • ブランドブックやオペレーション設計に徹底された戦略思考

STP分析で読み解く星野リゾートの戦略的意図

  • セグメンテーションは「年齢や性別」ではなく、「旅の目的・感情・価値観」
  • ターゲティングは“あえて狭く”設定し、ブランドごとに深く刺す
  • ポジショニングは、地域・建築・体験を通じて“記憶に残る滞在”をつくること

これにより、価格が高くても“また行きたい”と感じさせるブランドを成立させているのです。

まとめ:星野リゾートのSTP戦略に学ぶ、“価値で選ばれる仕組み”

星野リゾートは、「宿泊施設を売る企業」ではありません。
“体験と物語を設計する企業”です。

  • Segmentation:旅の感情と価値観を軸にした市場分解
  • Targeting:ブランドごとにターゲットを明確に設計
  • Positioning:競合が入り込めない“意味と体験”で差別化

これは、資本力がなくても「選ばれる理由」を作れるという証です。
中小企業でも、ターゲットを深く理解し、ポジショニングを明確にすれば、競合との違いを打ち出すことができます。

STP戦略とは、“売るための構造”ではなく、“信じてもらえる理由”を設計するための戦略なのです。

関連記事

無料配布中|STP分析が誰でもできる「実務テンプレート」

このテンプレートは戦略の方向性まで自然に導けるよう設計されています。会議・提案書・経営判断にもそのまま使えるプロ仕様です。